SWEET SPOT
君の席
映画館で君は迷っている
ポップコーンを持って席を探している
君はまるで老人のようだ
君はまるで少年のようだ
好きだと言えば
自信無さげに笑って
それは何故だと問い返す
洗濯物の山に埋もれる若い裸体
現実の波に揉まれる美しい感性
一層暗くなり幕が開く
私は手を挙げる
君の席はここにある
ビューティフル
金色の風が吹くのは五月
四ツ葉のクローバーと
シロツメクサの花冠
水が巡る
街に
体に
純粋に
水玉の汗をかく
額縁の中の美しい日々
幸福な絵本のストーリー
姿勢をピンと張る若葉
優しく暖かく
卵の殻を破り
産声が聞こえる
雨
濡れる森の美女
野獣と二人きり
蒸し暑い夜
せまい布団だけの国
哀しみが捩じれる
私たちは未だ若くて
エアコンの効かない部屋で
蜃気楼の様にそこに居た
「君の中に優しい雨を降らせるよ」
私には確かに君の声だけが聞こえていた
新しい世界
メニューを広げて考える
新しい世界!新しい世界!新しい世界!
新しい世界は手を広げて私を待っていてくれた
気分が高揚するフルコース
歩く度
明くる旅
また旅
あなたに
欲しい物をすくうスプーン
汚れたテーブルクロス
偽物だらけの輝いた人生に喜びの歌
さあ!私を一口で食べてくれ
新しい世界!新しい世界!新しい世界!
幽霊の旅
川を渡って来た先は静かな小部屋
微かに雨の音が聞こえる
上も下も右も左も無い
人の上に人は居無い
私の視線は宙を舞い空を飛ぶ
夜の街を徘徊する
取り繕い騙されていよう
生きる意味を探し続けて
転がり落ちる彷徨う魂
幽霊の旅は続く
空気を染めて隙間を埋めて
また川を越えていく
雨上がり
水溜まりを除けながら
STAY GOLD
私は輝く
私は幸せだ
私は裕福になる
私の夢は叶う
私は黄金の光の中にいる
全てうまくいく
若い肉体と
美しい心と
崇高な魂を私は持っている
果物
その果物は旅に出たし
惑星を作る事も出来たし
魔法を使う事も出来た
旬を過ぎて腐敗して
世界が変わっても
まだぶら下がっているよ
暗い道を歩いたあなたの
悲しい知らせを受けたあなたの
孤独な道を選ぶあなたの
幸せを願って
SWEET SPOT
老いた妖精と目が合った
夜
暗い夜
幼い夜
同じ名前の友達と歩く
朝
高い空
長い道
一日はすぐに終わってしまう
階段で泣いていた少年
大人になってしまった貴方が
自転車に乗りながら泣いていたのを
私は知っている
ゆらり
魂を磨いていく
強く
甘く
転がっていよう
困らせていいよ
手のひらの上で転がってあげる
苦しい時に甘える事が出来ず
誰かが手を差し伸べても
そっと跳ね返してしまう君よ
悲しい事を言わないで
話題を携えて
服を着替えて
会いに行くから
二人を結ぶのは糸ではなく電波
未来なんて誰も持っていないよ
一緒にずっと転がっていようよ
新しいお店を探そう
浮ついた君でいい
浮ついた君がいい
NATURAL ALIVE
木の実を探しているよ
五つの感覚と
六つ目の能力で
森を彷徨う小さな影
太陽と月のあいだで
生と死のあいだで
生きる為に生きる
この森の一部になって
一生を終える事が出来れば上出来
大金持ちでも貧乏でも
正社員でも水商売でも
人気者でも変り者でも
楽しくても辛くても
それはただ森を彷徨う
同じ
小さな影
木の実を探しているよ
ひとりぼっち
毎日毎日
小さな部屋の住人よ
ヘイ!毛布を剥いで外に出ようぜ
お金なんてちょっとしか無いけど
DVDでもレンタルしてさ
朝の光が反射して床に虹が光っているよ
毎晩毎晩
凝りもせず狭いユニットバスで
降り注ぐシャワー!
黄金の体を取り戻す儀式さ
必要としていたのは麗しき孤独
楽しく優しく哀しむ
何処からかついて来た花びらが床に落ちているよ
毎日毎日
鍵をかけて鍵を開けて
Hi ! 人は皆ひとりぼっちだ
Hi ! 人は皆ひとりぼっちなんだよ
NEVER FRUIT
見た事も無いよ
何処を探しても見つからないよ
今この瞬間に生まれているのだから
感じた事の無い気配
第七感が開く
種を蒔いて土は踊る
遺伝子は育って狂う
あの木になっているのは
新しい果実
知らない色と知らない形
五つの季節を越えて
十三月に熟れる
三百六十六日
二十五時間
私たちは変わっていく
たったひとつだけ
新しい果実
DIVA
あの日一度死んだのよ
腐った臭いのするあの川を泳ぐ魚は私
血走った目で歌っているのよ
絶望を閉じ込めて地獄行きのララバイ
よくも苦しめてくれたわよね
墓場から手を伸ばす
暗闇の中に伸びる手は
月の明かりに照らされて
貴方の眼に
新芽の様に映るでしょうか
花火
夏の蒼くて涼しい夜
プールで一日中遊んで日焼けした肌に
優しい風が吹いている
まあるいお月様を見上げて
虫の音を聞いている
家からはカレーライスの匂いがしている
こんなに素敵なプレゼントをありがとう
欲張ってばかりでごめんね
一瞬の花火が夜を彩っている
みんな同じ空を見上げている
幸福な日に立ち尽くして
善人も悪人も願いを捧げるよ
何故か嬉しくて何故か切なくて
こんなに綺麗なプレゼントをありがとう
我が儘ばかりでごめんね
雫
ざーざー
通り雨
夜の窓に伝う
街の光を反射して色付く雫
たった一人で世界と向き合って
苛立った脳
ウェアアーユー
満足などしていない
時速六十キロのワンボックスカー
水飛沫を上げる
ざーざー
びしょ濡れてふりだしに立ちすくむ
たった一人では寂し過ぎるから
浮き足立って
ハッピーバースデイ
傘を捨て
水溜まりを飛び越えて
光る雨の中へ
夜の雫の一つになる
スーパーマーケット
駅前のスーパーマーケット夜の九時
無防備な顔をして
商品棚を眺める人達
陳列された物の中から
必要な物を探している
今日はどんな一日でしたか
少し疲れて
だけど楽しい何かに期待して
手探りで幸福を求めている
牛乳パックを持って笑う
私達は荷物を持って歩き出す
この夜は明日の朝に続いている
少し疲れて
だけど楽しい何かに期待して
駅前のスーパーマーケット夜の九時